⼋王⼦アパート階段崩落事故から考える貸主のリスク管理

不動産ソリューション

2021年4月に東京都八王子市の築8年のアパートで、外階段が崩れ落ち、住人の方が死亡するというあってはならない事故が発生いたしました。今回の事故は築8年と築年数の浅い物件であること、設計と異なる施工、建築基準法が規定する防腐処理がされていないこと等から建築会社に起因する事故と考えられます。2020年10月には北海道苫⼩牧市の築25年程度の2階建アパートで、外廊下が崩落し5人がケガをするという事故が発生しております。改めて貸主のリスクについて考えたいと思います。

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上図は国⼟交通省が発表している⺠法、借地借家法等に基づき賃貸借契約によって発生する権利義務について纏めた資料です。注目していただきたいのは貸主には「必要な修繕を⾏う義務」があるということです。これは⾔い換えると貸主は、借主が適切な状態で居住していただく義務があり、その対価として賃料を受領しているということです。今回の事故はそもそも施工に起因する事故ですが、⼀方で適切な修繕を⾏わないことによる事故は貸主にとってリスクが⾼いため、改めて抑えるようにお願いします。以下に貸主リスクを避ける2つのポイントをお伝えします。

ポイント1.事故を発生させない心構え・定期的メンテナンス

①建築・取得時の心構え

【新築の場合】
賃貸経営は事業である以上、収益性が重要です。しかし、⾏き過ぎた利回りの追求が今回の東京アパート階段崩落事故に繋がっていると考えます。貸主は利回りの前に、人が住む場所であることを忘れてはいけません。
取得段階で安過ぎる建築コストは⼀度疑って⾒た方が賢明です。

【中古の場合】
中古のアパート・マンションは新築と⽐べて利回りが⾼く、築古であれば⾼利回りで資産形成に適した物件も多いです。しかし、中古物件は大規模修繕工事を⾏っていない状態で取引される場合も多く、購入側も部分補修で凌ぐケースも散⾒されます。既に建物の劣化現象が発生しており、大規模修繕工事を⾏ってない場合は工事実施を検討しましょう。中古で取得する場合、修繕費を考慮して⾦額交渉することも選択肢の⼀つです。

②定期的なメンテナンス

事故を発生させないためには定期的なメンテナンスが重要です。管理会社による⽇常の巡回点検、異常があった場合の即時対応は勿論のこと、10〜20年に1回の大規模修繕工事が必要です。必要時期にメンテナンス・修繕工事を⾏わず、繰延した場合、補修では効かず、全交換になる等、結果的に経費が⾼くなる場合が多いため、定期的に⾏うことを推奨いたします。

ポイント2.もしもの事故に備える「施設(建物管理)賠償責任保険」

賃貸物件を保有している方は、「施設(建物管理)賠償責任保険」に必ず入りましょう。保有しているアパート・マンションの⽋陥や管理不備等により万が⼀事故が起きてしまったときに、補償をしてくれる保険です。1事故あたり1億円限度でも10年で数千円〜数万円程度ですので、もし所有されている物件の保険加入状況が気になる方はすぐに保険会社に確認をしましょう。不動産の売買時には必ずご提案をさせていただいております。