賃貸物件の修繕・メンテナンスを考える
今回は、グループ会社でもあります矢島不動産管理が加盟しております、
全米不動産管理協会(IREM JAPAN)の修繕・メンテナンスの考え方をご紹介します。
予防、矯正、繰延の3種類の考え方が述べられております。
老朽化が進んでいく中で、修繕・メンテナンスはとても重要です。
当然築年数が経過して行けば、空室増加、家賃は下落傾向になりますが、
適切なリフォームやリノベーション、大規模修繕工事を行うことで、
家賃の維持・向上に繋がり、賃貸経営に良い影響を及ぼします。
予防 | ◆積極的なメンテナンスへのアプローチで、資産価値の維持向上に最も好ましい ◆物件の寿命を延ばし、物件を良い状態に保つことができる ◆居住者・テナントの満足に貢献できる ◆予期せぬ支出を予防し、通常の経費の上昇を抑えられる ◆以下のように分けることができる ・日常点検:外見と価値を保つのに欠かせない物件の日常的維持(例:清掃、ごみの除去) ・表面的:外見は良くなるが、運営や保護には実質的には貢献しない(例:新しい色に塗装) ・効率・持続的可能性:効率的で費用対効果のあるもの(例:収益改善リフォーム) |
矯正 | ◆何かが起きてから反応し、対応する保守で、殆どが入居者やテナントからの通知がある ◆物件の更なる損害と、入居者・テナントの健康と安全を守るためにすぐにしなければならない予定外の緊急保守 ◆入居者・テナントの不満・経費の上昇に繋がる ◆矯正が続くと、空室の増加、物件のNOI(営業純利益)減少に繋がる |
繰延 | ◆するべき修理や取替で何らかの理由で意図的に延命され、矯正されることもあればされないこともある ◆繰延する場合:物件を「現況」で売る場合など ◆繰延をすると、物件再販時の悪影響や収入減少に繋がる可能性があるため原則推奨しない |
1つ目が最も望ましい「予防」です。
言葉の通り、予防保全的に修繕・メンテナンスをして行く考え方です。
賃貸経営は事業であるため利益に注目が必要です。
経費を上手くコントロールして行きながら、資産価値向上に取り組んで行くことがベストです。
続いて2つ目は「矯正」です。これは何かが起きてから対応する方針です。
主に入居者から連絡があり、対応するというものです。つまり、問題が顕在化してから対応するため、入居者・テナントの不満、経費の上昇に繋がってしまいます。
例えば、建物のクラックやチョーキングといった劣化現象の段階で大規模修繕工事を行う「予防」に対して、実際に漏水が発生してから大規模修繕工事を行う「矯正」では、総合的に「予防」が良いことは明らかです。
時には、修繕ではなく全交換をしなければならなかったり、結果的に「矯正」の方が、コストが掛かることもあり、やはり「予防」という考え方がベストだと思います。
最後に3つ目の「繰延」です。「繰延」は修繕時期を延期するというものです。
過去に修繕を行っていたり、調査の結果、建物の状態が良くて「繰延」する分には良いですが、
建物の状態が悪いのに「繰延」することは当然リスクを伴うため、推奨いたしません。
例としては物件を売却する場合等が挙げられます。
ただし、行うべき修繕費用を考慮した売却価格になる、減額されることが想定されます。
修繕・メンテナンスは「予防」が重要であることがわかるかと思いますが、重要なのはその費用の捻出です。当然ながらキャッシュフローが出ていることが大前提となりますが、具体的な費用の考え方を後にお伝えしたいと思います。